医療の世界は今大きく変わりつつあります。皮膚科も例外ではありません。

生命科学の進歩で皮膚の病気について多くのことが解ってきました。かつて研究レベルでしか使えなかった物質が治療薬として使える時代になり、新しい発見から臨床応用までのスピード感は以前とは比較になりません。

確かに病気によっては不明な部分も多く、治療の選択肢が限られ、根治には至らない場合もまだあります。とはいえ古い治療だけで治療するのは、患者の皆様にとって決して望ましいことではありません。

今求められる医師の役割とは

特定のタンパク質や分子をターゲットとした治療が次々と出てくる中、それらがどうやって効果を発揮し、結果としてどうなるのかを理解して、患者さんごとに最適な治療を見極めていくことが求められています。

病気の最新のメカニズムや免疫学などの基礎医学を十分に理解した上で、患者さん一人一人のニーズを把握し、難しい作用機序や副作用についてご理解いただけるようにわかりやすく話し、その上で適切な治療を行っていく…

そんな「基礎医学」と「臨床医療」と「患者さんのお気持ち」をつなげる役割が、私たち医師に今まで以上に求められる時代となっています。

ここではいくつかの一般的な皮膚疾患についての基本的な考え方、治療などについてご説明します。

アトピー性皮膚炎

遺伝的素因や環境、ストレスなどのいくつかの要因が影響しあって慢性の湿疹を生じる病気です。まだ根治する治療法は見つかっていませんが、年齢とともに症状は軽くなっていきます。

ですので、治療の目標は、いかにかゆみや湿疹の症状による苦痛を減らし、日常生活を普通の状態で過ごせるようにしていくか、ということが目標になります。

現在でも治療の中心は副腎皮質ステロイド外用剤となり、薬剤の強さや使い方によっては皮膚萎縮などの副作用が出る可能性はあります。このため、治療のポイントは、必要十分な治療で症状をうまくコントロールしながら、ステロイド外用剤の使用量やランクをどうやって最小限にできるか?が重要です。

ステロイド外用剤以外にも、免疫機能を調整する外用剤(タクロリムス)で症状をコントロールできる場合もあります。

また紫外線療法(ナローバンドUVB、エキシマライト)によるかゆみや湿疹病変の治療もあり、ステロイド外用だけでは難治な場所には効果が期待されます。

外用治療だけでうまくいかない場合は、症状により免疫抑制剤(シクロスポリンやステロイド)の内服療法も行う場合があります。この場合には薬剤による副作用に注意する必要があり、定期的な血液検査を必要とすることがあります。

ただし薬剤で抑えることだけを考えず、生活の中に隠れている悪化因子を見つけて除外し、そもそも症状が悪くなりにくいライフスタイル、スキンケアにしていくことは非常に重要です。

そうすることでステロイド外用剤をランクを弱いものに変更したり、の使う量を減らしていくことができます。

 

最近免疫をアレルギー方向に進めるタンパク(IL-4とIL-13というサイトカイン)を中和する生物学的製剤が日本でも承認され、ステロイド外用で症状がうまくコントロールできないアトピー性皮膚炎の方の治療に使えるようになりました。

慢性蕁麻疹

24時間以内に消えていくような、様々な形の、強いかゆみを伴う膨疹(ぼうしん)と呼ばれる皮膚症状が特徴です。これが出たり引いたりを繰り返します。

ウィルスや細菌などの感染症、食物アレルギーなど、原因がはっきりするものもありますが、原因が特定できるのはじんましん全体の10-20%と言われています。このため、原因がわからない場合は、抗アレルギー剤の内服療法で痒みの皮膚症状が出ない状態を維持することが治療の目標となります。1ヶ月以上の症状持続で慢性とされます.どの程度症状が続くかは個人によって異なります。

中には複数の内服薬を用いても治療がうまくいかない場合もありますが、現在ではアレルギーに関連するIgEという種類の抗体を中和する抗体療法が認可されています。

尋常性乾癬

何らかの刺激で皮膚の角化細胞の増殖が数倍早くなり、その結果はがれ落ちるのが間に合わず、堆積して厚い角質(鱗屑といいます)を乗せた赤い皮疹が生じる病気です。

何らかの刺激により皮膚で樹状細胞という免疫細胞が活性化され、IL-23というサイトカイン(他の細胞を活性化、分化するタンパク質)が作られます。

それがT細胞を活性化し、IL-17というサイトカインを作るTh17細胞になり、さらに他の細胞も巻き込んで皮膚がどんどん分厚くなる症状が続きます。

乾癬は皮膚病の中でも研究が最も進んでいるものの一つで、最近は新たな治療がいくつも使えるようになっています。

外用療法

ステロイド外用剤、そして活性化ビタミンD3外用剤を用います。最近ではこれら2種類の合剤での治療が主流となってきています。

紫外線療法

紫外線には光老化などの悪い影響もありますが、発がん性があるとされる波長を除き、特定の波長だけを増幅させた光線療法(ナローバンドUVB、エキシマライト)があります。特定の波長の紫外線が活性化したT細胞に細胞死を誘導し、皮膚の増殖を正常化させていきます。週1~2回の照射を行い、ある程度の治療期間が必要となることが多いです。

内服療法

これまでは活性化ビタミンA誘導体、シクロスポリンという免疫抑制剤での治療が主流でした。しかしこれらには種々の副作用が生じるため、長期にわたる治療が困難なことが多くありました。

しかし近年全く作用の異なる内服薬が登場し、これまでの2種類の内服を使用せずに治療が可能となってきました。

生物学的製剤

乾癬は免疫の異常な活性化により起きる疾患であり、免疫細胞の活性化にはサイトカインというタンパク質が関わっているのがわかっています。そこでサイトカインを中和する抗体を用いた治療が開発され、現在(2017年時点)ではすでに6種類が国内でも認可されています。

これまでの治療で難治だった方への有効な選択肢になる治療で、有効性の高さも示されています。特に関節症状を合併し、関節変形の可能性もある関節症性乾癬では、関節破壊を抑える薬剤として重要な治療と思われます。既存療法よりも有効性は高いのですが、難点は高額医療となること、薬剤により感染症などの副作用の可能性があること、が挙げられます。

この治療を安全に行うため、日本皮膚科学会の「生物学的製剤による治療ガイドライン」に従って治療が行われます。生物学的製剤の導入(治療開始)は日本皮膚科学会認定施設のみで可能となっており、これまでは大学病院や一部の総合病院の皮膚科に限定されていました。

しかし2018年から制度が変更され、十分な経験を持つ専門医が在籍するクリニックでも導入と維持療法が可能となりました。

 

緑かごやま皮膚科クリニックは2018年6月13日付で生物学的製剤投与承認施設となりました。連携施設である藤田保健衛生大学病院皮膚科とともに、乾癬の治療を必要とする方々に貢献できるよう、努力してまいります。