アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎

遺伝的要素としてのアトピー素因(ぜんそくやアトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギー疾患の有無)や環境、ストレスなどのいくつかが影響して慢性の湿疹を生じる病気です。

以下の3つを満たし、さらに特徴的な肌の乾燥や家族にアレルギー疾患があればアトピー性皮膚炎と診断されます。

1.かゆみがある

2.湿疹が左右対称性の特徴的な分布であること

3.慢性・繰り返す経過である(乳児で2ヶ月以上、そのほかで6ヶ月上)

小児では9.8~16.8%の方がアトピー性皮膚炎があると報告されています。それが40歳以上となると4.8%にまで減少するため、基本的には年令とともに症状が消えていくと考えられます。

治療

年令とともに自然に症状が消えていきますが、遺伝的要素もあるため根治(2度と症状が出なくなる)療法はまだありません。ほとんど症状がなくなっても過度なストレスや環境変化で症状が出ることもあります。

ですので治療の目標は症状がない、あるいはかゆみや湿疹による苦痛を減らして日常生活を普通に過ごせるようになることとなります。

当院では日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインに沿って治療を行っています。

薬物療法

抗炎症外用薬

アトピー性皮膚炎の症状に対して有効性と安全性が科学的に十分証明されているのは副腎皮質ステロイド外用剤とタクロリムス軟膏です。

ステロイド外用剤は強さや使い方によって皮膚萎縮などの副作用の可能性があり、症状をコントロールしつつ、その影響を最小限にできるようにうまく使うことが大切です。

タクロリムスは免疫機能を調整する外用剤で、塗ると刺激感(ほてり、ヒリヒリ感)が最初に出ますが、自然に消えていくことが多いです。ステロイド外用剤ではないので皮膚萎縮や血管拡張などの副作用は心配ありません。

外用剤は塗り方ひとつで効果が変わる薬です。外用の必要な場所や状態、外用量や塗り方を知り、患者さん自身が上手に塗り薬を使えるように、担当医との十分なコミュニケーションが大切です。

保湿剤

アトピー性皮膚炎の発症原因の一つに皮膚バリア機能の低下があります。表皮細胞間脂質やフィラグリンという角質タンパクの減少により、細菌やアレルゲンが内部に入りやすくなり、アレルギー性炎症が皮膚に起こります。

バリア機能を正常にして、炎症が持続しない皮膚にするために保湿が大切です。

内服療法

抗アレルギー剤

アトピー性皮膚炎では痒みのコントロールはとても重要です。搔かなければ症状は悪くならず、感染や白内障などの眼の合併症リスクを減らすこともできます。

痒みの原因である湿疹を治すのは外用剤の役目ですが、痒みを減らす治療として抗アレルギー剤があります。薬剤の効果や眠気などの副作用は、薬剤ごと、個人の差がかなりあります。ですので効果がありつつ副作用が問題ない、その方にあった内服薬を飲んで頂くのが大切です。

シクロスポリン

免疫抑制剤の一種で、多くの国でアトピー性皮膚炎に対して適応が認められています。日本でも重症のアトピーの方への使用が承認されており、投与期間は最大で連続3ヶ月間となります。シクロスポリンには高血圧、肝障害、腎機能障害、感染症の悪化などの副作用もありうるため、専門医のもとで定期的に血液検査をするなど、副作用のチェックが望ましいでしょう。

ステロイド内服療法

症状が急に悪くなった時や、重症な方がはやく良い状態にする時などに用いられます。ステロイド内服薬は長期内服になるほど副作用(感染症、高血圧、胃炎・胃潰瘍、副腎機能抑制、肥満、etc)があるため、適切な量と期間でのコントロールが大切です。

漢方療法

アトピー性皮膚炎に対する漢方療法は多くが数十例程度の症例研究のため、科学的な有効性が確立していない部分があります。ガイドラインでは補助的な治療とされています。

紫外線療法

ステロイド外用だけでは難治な症状に対して、またステロイド外用剤の強さや量、外用期間を少なくするために、紫外線療法(ナローバンドUVB、エキシマライト)は有効と考えられます。

ナローバンドでは311nm、エキシマライトでは308nmの波長の光を選択的に照射する治療です。紫外線は波長が短いと発がん性が問題となりますが、これらの治療では短い波長の光を含まず、発がんについての報告はありません。

最初から長時間照射すると日焼けのような紅斑や刺激感、色素沈着が生じる場合があり、少なめの量から徐々に増量していきます。3~4回目からかゆみの減少、皮疹の改善などが認められることが多いです。週1~3回程度の照射を一定期間行います。

生物学的製剤

近年、様々な病気の原因や悪化因子を直接抑制する抗体製剤(生物学的製剤)が次々と登場しています。アトピー性皮膚炎ではデュピルマブという治療薬が2018年に日本でも認可されました。これはアレルギー方向に免疫を誘導するIL-4とIL-13というサイトカインを中和する抗体で、これによりアレルギー性の炎症が抑えられます。治療としては2週間毎に皮下注射を行う形となります。

臨床試験ではこの薬剤だけで約半数の患者さんで症状の75%がなくなり、ほぼ症状がなくなる方が37%、ステロイド外用剤と併用すると7割の方は症状の75%が消失し、ほぼ症状が消える方が39%と報告されています。

副作用は結膜炎や注射した部分が赤くなるなどの反応があります。

以上のような治療はありますが、ただ薬剤で抑えることだけを考えず、ストレスや不眠、肌への摩擦や部屋のホコリ、間違った入浴習慣など、生活の中に隠れているアトピーの悪化因子をできるだけ減らして、症状が悪くなりにくいライフスタイルやスキンケアを習慣にすることが、ステロイド外用剤の使う量を減らしていくためにも、実は非常に重要です。