何らかの刺激で皮膚の角化細胞の増殖が数倍早くなり、その結果はがれ落ちるのが間に合わず、堆積して厚い角質(鱗屑といいます)を乗せた赤い皮疹が生じる病気です。皮膚症状のみのものと関節症状を伴うものがあります。

何らかの刺激により皮膚で樹状細胞という免疫細胞が活性化され、IL-23というサイトカイン(他の細胞を活性化、分化するタンパク質)が作られ、それがT細胞を活性化し、IL-17というサイトカインを作るTh17細胞になり、さらにTNF-αを産生する好中球など他の細胞も巻き込んで皮膚が慢性炎症を伴ってどんどん分厚くなっていきます。

乾癬は皮膚病の中でも研究が最も進んでいるものの一つで、メカニズムの解明に伴って新たな治療がいくつも使えるようになっています。

 

外用療法

ステロイド外用剤、そして活性化ビタミンD3外用剤を用います。最近ではこれら2種類の合剤での治療が主流となってきています。

 

紫外線療法

紫外線には光老化などの悪い影響もありますが、発がん性があるとされる波長を除き、特定の波長だけを用いた光線療法(ナローバンドUVB、エキシマライト(セラビームミニ)、エキシマレーザー(XTRAC))があります。特定の波長の紫外線が活性化したT細胞に細胞死を誘導し、皮膚の増殖を正常化させていきます。

週1~2回の照射を行い、ある程度の治療期間が必要となることが多いです。

症状の範囲により使う機器を決めていまいります。

内服療法

これまでは活性化ビタミンA誘導体(エトレチナート)、シクロスポリンという免疫抑制剤での治療が主流でした。しかしエトレチナートには肝障害、高脂血症、皮膚剥離、催奇形性のリスク、シクロスポリンには肝障害・腎障害・感染症のリスクなどの副作用がありうるため、長期にわたる治療が困難なことが多くありました。

しかしその後登場した薬剤、アプレミラストは、免疫細胞内のcAMPが分解されないようにすることで、細胞の活性化を抑え、免疫全体を安定させるように働きます。副作用としては軟便や下痢が中心で血液検査を要するような副作用は殆ど起きません。難点としてはコスト(3割負担で18000円/月)ほどかかることです。

 

生物学的製剤

乾癬は免疫の異常な活性化により起きる疾患で、免疫細胞の活性化にはサイトカインというタンパク質が関わっています。そこでTNF-α、IL-23、IL-17というサイトカイン(免疫を制御するタンパク質)を中和する抗体を用いた治療が開発され、現在(2021年1月時点)では8種類が国内でも認可されています。

これまでの治療で難治だった方への有効な選択肢になる治療で、特に関節症状を合併し、関節変形の可能性もある関節症性乾癬では、関節破壊を抑える薬剤として重要な治療です。どのタイプの乾癬にも既存療法よりも有効性は高いのですが、難点は高額医療となること、薬剤により感染症などの副作用の可能性があることが挙げられます。

この治療を安全に行うため、日本皮膚科学会の「生物学的製剤による治療ガイドライン」に従って治療が行われます。現在のところ生物学的製剤の導入(治療開始)は日本皮膚科学会が認定する生物学的製剤使用承認施設(ほとんどは大学病院や一部の総合病院の皮膚科)のみで可能で、それ以外の皮膚科では維持療法(認定施設で治療を開始後の継続)が可能となっています。

維持療法に対応するクリニックもまだ少ないのが現状ですが、当院は生物学的製剤使用承認クリニックとして愛知県で最初(2018年6月)に認可を受け、藤田医科大学皮膚科学講座と連携して生物学的製剤の導入・維持療法に取り組んでいます。地域の乾癬患者の方々に幅広い治療の選択肢を安全・確実にお届けできるよう、努力してまいりたいと思います。